2009年10月7日水曜日

バンクーバーの光と陰

レジデントから学ぶことが多いので、今日も麻酔準備中のレジデントにいろいろと尋ねるため、アパートを早く出た。

6時半ごろ、まだあたりは真っ暗なのだが、病院の前の通りを歩いていた時のことである。
その時間帯は人通りは決して多くはないのだが、大通りに面しているので車はたくさん走っている。

誰かとすれちがった・・・と思った瞬間、背後から声をかけられた。
振り返ってみると、おそらく20才代と思われるブロンドのきちんとした身なりの女性だった。

彼女は近づいてきて、まず自分の名前を名乗り、次から次へと話し始めた。
彼女の英語はわかりやすかったのだが、内容がとりとめなく、しかしあえてまとめると以下のような内容だった。

① 自分はひとりぼっちで頼れる人がいない。あたりは暗いし、慣れない土地だからとても怖い。
② 昨晩はホテルに泊まったのだが、戻ることができない。(理由はしゃべっていたようだったが、聞き取れなかった)
③ ブラックベリー(ケータイ)が壊れているので、誰とも連絡ができなくて困っている。
④ 7時か7時半に出る船に乗るので、港まで30分かけて歩くつもり。

これだけ続けざまにしゃべったあと、こちらの反応を待っているようだった。

正直、とても困った。
たぶんお金が必要だということなんだろうが、だから恵んでほしい・・・とも言わないのである。

そこでそのままずっと立ち止まっているわけにもいかず、「悪いけど自分には何もしてあげられそうもないから・・・」と立ち去ろうとした時、彼女は
「3ドル貸してくれない? 今はあなたの名前も連絡先も知らないけれど、あとで返すから・・・」

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あとで指導教官に尋ねてみたら、これはドラッグにやられているか、家出している若者の可能性が高いということだった。
家を出てはお金がなくなるとまた戻る、みたいなことをくりかえす若者が、残念ながらカナダには決して少なくないとのことである。
ダウンタウンにいるホームレスとは、また違う人たちらしい。

こういう経験は自分には初めてでとても驚くとともに、この美しいバンクーバーもこういった社会問題とは決して無縁ではないことを改めて知らされた。

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