2009年10月21日水曜日

ASA 第4日

いつもなら火曜日の時点で帰っているのだが、今年は火曜日の午後最後に一側肺換気のリフレッシャーコースレクチャーがあったため、この日までは残ることにした。

自分がこの分野に関しては最新の文献をかき集めている最中ということもあるのかもしれないが、講義の内容としてはそんなに新鮮なものではなかった。
ただ、米国の権威ある教授の講義を受けるチャンスはそうないわけで、いろいろな問題に対する自分の考え方と照らし合わせたり比較したりすることができた点はとてもよかった。

ある患者に対してどのサイズのダブルルーメンチューブを用いるかということに対して、トロント大学の教授の発言を引用しつつ、「結局は合意が得られていない」と明確に発言してくれたことはとてもありがたかった。
左主気管支径が、性別や身長に関わらず全くバラバラだというのがその根拠となっている。
ゴールドスタンダードがないことを知っておくことはとても重要であり、いかなるチューブ径の予測方法も「ある個人あるいはグループの意見を利用したもの」ということになる。

その点、Aman ら (Anesth Analg 2008; 106: 379-383) の考え方はある意味、特殊である。
チューブ径を正確に求めることをあきらめて最初から細めのチューブ (35 Fr) を選ぶというような方針をとってとしても、さまざまな合併症の頻度はそれまでの伝統的な方法と変わらないというものである。
主として経済的な理由でそのような方針を採っている病院を知っているが、決して誤りというわけではないことになる。

ダブルルーメンチューブの適切な深さも、同様に予測しがたい。
したがって慎重な位置決めが必要となる。
気管支ファイバーを用いて位置決めを行なう際には、①左主気管支径が約5cmあること、②右上葉枝が多くの場合3分岐であることを利用すれば、第2分岐部を気管分岐部と勘違いするリスクがかなり低くなる。

このレクチャーでは、うれしいことが2つあった。
一つは自分の論文が引用されていたこと。
パブリッシュされてから7年近くの歳月が流れているのに、いまだに人様のお役に立っていることがわかりとても光栄に感じた。

もう一つは、自分のバンクーバーでの指導医の総説を評して、outstanding で superb だと言っていたことである。
自分はこのレビューを読んで大きなインパクトを受け、彼と連絡をとり渡加を決意したので、この米国の教授と価値観を共有できたようで感激した。

初日に自分の研究を別の米国の教授たちに酷評され心が折れそうになったが、最終日になって広い米国には自分と価値観の近い人もいることがわかり、大いに勇気を得ることができた。

1 件のコメント:

  1. 先生、こんにちは!!初コメント、失礼いたします。
    ASA、お疲れさまでした。
    いつもダブルルーメンチューブで、本当に気管分岐部?もしかして、第二分岐部?と、特に左で迷うことがあるのですが、そうやって見分けるのですね、ありがとうございます!!でも、左主気管支の約5cmって、どうやって測ればよいのですか??月曜日、ちょうど肺外科なので、見てみようと思います。
    個人的には、左は、先生に教えていただいたサイトに書いてあった、2時8時方向の同サイズの分岐で判断しています。けど、いまいち自信が持てません。。。
    また色々と教えてください。

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