12/2 (水) 快晴
トロント大学から Visiting Professor を招いて、Thoracic Anesthesia に関する講演会が催された。
備忘録として、内容を簡単に書きとめておく。
ALI のリスクファクター等については、著書に載せたので割愛する。
1) 手術側の肺をいかに虚脱させるか
換気ガスの構成を吸収されやすいものにする Ko R et al. Anesth Analg 2009; 108:1092-1096
開胸前に非換気側チューブを開放して換気側肺を換気すると、圧が縦隔を通して対側に伝わり、非換気側肺の虚脱が促進される Pfitzner J et al. Anaesthesia 1999; 54: 437-443
気管支内を吸引する Narayanaswamy M et al. Anesth Analg 2009; 108: 1097-1101
2) 低酸素血症の治療
CPAP が有用である Caplan LM et al. Anesth Analg 1980; 59: 847-851 (30年前の知見)
術者が CPAP を拒否する場合、より選択的な酸素化が有用
Ku CM et al. J Cardiothorac Vasc Anesth 2009 (in press)
3) 心拍出量と酸素化
心拍出量を増やすと Qs/Qt と SVo2 はともに増え、酸素化はかえって悪くなる
Slinger P et al. Anesthesiology 1995; 82: 940-946
Russell WJ et al. Anaesth Intensive Care 2004; 32: 644-648
4) いかにシャントを減らすか
肺血管抵抗は肺容量が FRC レベルのときに最小なので、換気側肺を FRC レベルに保ちたい。
→ total PEEP と lower inflection pointo との相対関係が重要になる
(COPD患者では auto PEEP がもともと高いので注意が必要)
→ CPAP の効果は約束されているが、PEEP の効果が人によってばらつくという話につながる。
5) 肺切除後のARDS の治療法
CD プレイヤーのような小さな機械で、人工的に酸素化をはかる
Iglesias M et al. Anal Thorac Surg 2008; 85: 237-244
夜は、肺をいかに分離するかについての講演だった。
挿管困難、肺全摘後の縫合不全などの例を挙げ、気管支内チューブ、気管支ブロッカー、ダブルルーメンチューブなどについて最新の知見を紹介していた。
Thoracic Anesthesia の A B C は、
A ・・・ Anatomy
B ・・・ Bronchoscope
C ・・・ Chest X-ray, Chest CT
なのだそうだ。
上記のAとBについては、気管支の解剖を本当の意味で理解するのがいかに難しいかという話だった。
しかしそれを理解しないと、安全で確実な肺分離はありえないというわけである。
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